坂井獣医科 Sakai Animal Hospital
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  2018年11月 中毒について  
 

 日増しに寒さが身に染みるようになりました。冬がもうすぐそこまで来ているようですね。前回の更新からしばらく間が空いてしまい、申し訳ありません。
 さて、今回は「中毒」についてです。中毒を起こしやすい身近な物の一例や、いざ中毒を起こす物をワンちゃんネコちゃんが食べてしまった・接触した時の飼い主さんがとるべき行動などを紹介していきます。


 
     
  身近な中毒物質「チョコレート」
身近な中毒物質チョコレート中毒をおこす動物/犬・猫
来院度/★★★
危険度/★
 来院頻度No.1!最も高頻度に来院されます。少量であれば危険性は低いですが、食べてしまった量やカカオ含有量が多いチョコなど条件次第では深刻な状況におちいる可能性もあります。
 
 

症状

 

 一般的に摂取後1〜6時間後にあらわれます。
初期…落ち着きがなくなる、多飲、吐き下し
進行すると…より落ち着きがなくなる、多尿、震え、けいれん発作
 チョコレートの大量摂取によって不整脈、あるいは呼吸不全が起こることで、まれではありますが死亡することも。
また、脂肪分が多いチョコレートを摂取した場合は、摂取後24〜72時間に急性膵炎を発症する可能性もあります。


 
     
  身近な中毒物質「ネギ類(玉ネギ、長ネギ、ニンニク、ニラなど)」
身近な中毒物質ネギ類中毒をおこす動物/犬・猫
来院度/★★★
危険度/★★
 成分のしみ出たスープも駄目。ワンちゃんでは、チョコレートに次いで有名な中毒物質です。ネコちゃんでも同様に中毒を起こし、ワンちゃんよりもさらに感受性が高いといわれています。
 ネギ類に含まれる有機硫化物が消化管で吸収され、代謝を受けて強い酸化物質になることで、溶血などの毒性を示します。
 血液に異常が現れる量は1kgのワンちゃんに対しネギ類15〜30g、1kgのネコちゃんに対しネギ類5gです。
 
 

症状

 

 活動性の低下、ヘモグロビン尿(血尿)、黄疸、呼吸が荒くなる、頻脈、虚弱、腹部痛、嘔吐、下痢などの消化器症状もみられることがあります。
 「カレーを食べてしまったけれど、玉ねぎは入れてないから大丈夫なはず…」というような事があります。しかし具として玉ねぎは入れていなくても、カレーのルウの成分を確認すると玉ねぎが使われていた!ということは現実によくあるので注意が必要です。
 同様に、ネギ類の成分が染み出たスープなども禁忌です。


 
     
  身近な中毒物質「キシリトール」
身近な中毒物質キシリトール中毒をおこす動物/犬
来院度/★★
危険度/★★
 1粒でも危険。日本でもキシリトール入りのガムが販売されるようになってから、時折みられるようになった中毒です。ワンちゃんに多く見られます。
 キシリトールを摂取するとインスリンが大量に放出され、摂取後30〜60分で低血糖に陥ります。低血糖は摂取後12時間まで起こりえます。
 摂取した量によっては肝障害が起こることもあります。
 キシリトールガム1粒のキシリトール含有量は大体0.3〜1.3g程度です。1kgのワンちゃんに対しキシリトール0.1g以上で低血糖になる可能性があり、例えば3kgのワンちゃんがたった一粒ガムを食べてしまっただけで低血糖になるという計算になります。
 
 

症状

 

 摂取後30〜60分…低血糖症状(嘔吐、傾眠、運動失調)
 さらに低血糖が進むと…虚脱、発作


 
     
  身近な中毒物質「ブドウ、レーズン」
身近な中毒物質キシリトール中毒をおこす動物/犬
来院度/★★
危険度/★★
 ワンちゃんがブドウやレーズンを摂取すると、急性腎不全を起こして死に至ることがあります。
 生のブドウよりもレーズン(干しブドウ)のほうが、中毒症状を示しやすいといわれています。
 なぜブドウやレーズンで中毒になるのかは、じつはまだ解明されていません。また、摂取した量によって中毒になる、ならないが決まるのかもわかっていないのが現状です。1kgのワンちゃんに対する致死量は4〜5粒だ、という報告もあれば、1kgのブドウを食べても無症状だったという報告があるのです。
 
 

症状

 

 摂取後24時間以内に起こる可能性がある
  …嘔吐、食欲不振、傾眠、下痢
 摂取後48時間以降に起こる可能性がある…急性腎不全


 
     
  身近な中毒物質「ユリ」
身近な中毒物質ユリ中毒をおこす動物/猫
来院度/★★
危険度/★★★
 死亡する可能性がとても高いユリはネコちゃんにとって非常に危険な観葉植物です。摂取量が少量でも、急性尿細管壊死を特徴とする急性腎不全を引き起こし、死に至ります。ユリを活けてある花瓶の水はもちろん、葉っぱ一枚、花粉程度でも中毒が生じる可能性があるのです。しかしどうして中毒になるのかは正確には分かってはいません。
 
 

症状

 

 摂取後12時間以内に発症…嘔吐、食欲不振、沈うつ、多飲・多尿
 症状は嘔吐から始まり、摂取後4〜6時間以内にいったん治まり、一見問題が改善したかのように見えることがあります。しかし、腎不全が摂取後24〜96時間以内に発症するのです。


 
     
 

中毒物質を食べてしまった時は

 

 まず、落ち着いて以下の確認を行います。
・毒物の種類(成分がわかるものがあれば尚良し)
・毒物の量
・毒物を摂取してからの時間
・症状の有無
・症状が現れた順序
・口臭や吐物のにおい
 中毒物質を食べてしまったばかりの状態の場合、病院ではお薬で吐かせる(催吐)処置を行います。この処置は早期であればあるほど効果が高く、早めに来院していただく必要があります。(摂取後2時間以内が目安です)また、摂取はしていなくても目、皮膚に毒物が接触した場合はただちに浄化します。これは飼い主さんにもしていただける応急処置です。


眼に毒物が接触した時は
   シャンプーの原液、洗剤、アルコールなどの毒物が眼に入った事が明確な場合は、速やかにぬるま湯(水道水)・生理食塩水・蒸留水などで、できるだけ長い時間洗い流します。この時に、濡れティッシュ(防腐剤入り)は使用しないでください。処置が済みましたら速やかにご来院ください。
※痛がって処置が難しい場合は決して無理をせず、眼をこすったりしないように気を付けながら速やかにご来院ください。
毒物が皮膚に接触した時は
   毒物が皮膚に接触した直後は刺激やアレルギー反応など皮膚のみに症状があらわれます。毒物が皮膚から吸収されてしまうと全身に症状が現れることもあるため、ただちにぬるま湯で洗い流します。処置が済みましたら速やかにご来院ください。
※状態が良くない場合や、嫌がって処置が難しい場合は無理をせずに、速やかにご来院ください。
 
     
 

身近な中毒物質ユリ いかがでしたか?ここでは紹介しきれないほど、ワンちゃんネコちゃんにとって危険なものはたくさんあります。一番の予防は、毒物に触れさせないことです。ゴミ箱は簡単に蓋が開かないようにする、テーブルに食べ物を置いたままにしない、毒物がある部屋(生け花など)には入らせないなど、対策を考えてみましょう。

 
     
  参考:講談社 Interzoo as vol.30 No.5  
  この記事は2018年11月に制作された内容です。  
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