/ 12月〈2〉尿石症(猫泌尿器症候群)について
猫の尿石症はよく見られる疾患です。血尿や排尿障害などの症状がみられます。一般的にこの疾患は抗生物質や止血剤などで改善しますが、処置が遅れたり間違ったりすると慢性の膀胱炎を繰り返したり、尿道が狭くなり狭窄を起こし、尿道閉塞を併発し腎臓の機能が低下し、重篤な場合には外科的な処置を行わないと腎不全により死亡することもあります。

※尿石症とは厳密に言うと、腎臓から尿管、膀胱、尿道にかけて結石が形成された状態をいいますが、同じような言葉に猫泌尿器症候群があります。
これは尿石症は当然ですが、尿石以外の原因で下部尿路、特に尿路が閉塞し排尿障害を起こした状態をあわせて猫泌尿器症候群とよびます。
最近では猫泌尿器症候群の定義が曖昧である理由から猫下部尿路疾患として統一されています。


原因
尿石症の原因としては、つくられた石のことをいいますが、なぜ尿路に石がつくられるのかはまだはっきりとしたことは解っていません。一般的には尿中に含まれる成分が何らかの原因(食事の問題、飲水量の問題)で尿の濃度が飽和状態になり、結晶化、また結晶化したものが集まり結石となる場合、尿路の細菌感染により細菌や炎症によって剥がれ落ちた細胞が結石形成の要因になっていると考えられています。

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症状
尿石症の症状は尿石のできる場所によってことなります。猫でもっともよく尿石が見られる場所は膀胱と尿道です。

膀胱結石の場合…症状としては血尿や頻尿が主ですが腎臓への影響はあまりありません。しかし、尿道に結石が入り込むと血尿や頻尿のほかに排尿困難のため排尿時の痛み、膀胱に多量の尿が溜まり腹部の膨満が見られます。

尿道結石の場合…処置が遅れると腎不全に陥り死亡してしまう可能性もあります。

腎結石の場合…血尿や細菌尿が長期にわたりみられると同時に腎機能が悪化する可能性があることから十分に注意する必要があります。手遅れになる前の治療を受けることが必要です。

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特徴
猫における尿石症の発症は若い年齢の雄猫によくみられ、高齢の猫には少ないとされています。
形成される結石の種類は一般的にはストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)を主成分とする尿石がもっとも多く見られますが、このほかにシュウ酸カルシュウム、尿酸アンモニュウム、尿酸などの成分による結石もみられます。

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今月のまとめ
尿路疾患は遺伝的なもの、環境的なもの、食事的なもの、ストレスなど色々なものが関係しています。症状としてはおしっこを頻繁にしだしたり、イライラしたり、血尿がでたりと見た目で確認できますが、そのシグナルを見逃してしまっている飼い主さんが多いように思います。これから寒くなってくると運動することも減り限界まで排尿を我慢する子も増えます。そうすると膀胱炎、結石の要因を増幅させる可能性があります。
愛犬、愛猫のちょっとした行為を見逃さず、おかしいかなっと思ったらまず、なるべく新しいおしっこをもって動物病院に来院しましょう。
おしっこが詰まってしまうと腎不全をおこし死亡してしまう可能性がありますので様子をみず、早めの診察が望まれます。
雄が何度も繰り返す場合は外科的手術も選択肢の一つになります。

参考資料 講談社 イラストでみる猫の病気

12月〈1〉 泌尿器疾患について(膀胱炎、尿路感染症)

この記事は2008年12月現在制作された内容です。記載内容は予告なく修正、変更を行なう場合が有ります。
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