/ 1月〈1〉 うさぎの毛球症について2
あけましておめでとうございます。今年も坂井獣医科をよろしくお願いいたします。
みなさん、わんちゃん、ねこちゃんも今年1年元気で過ごせますように。
今月は年をまたいでしまいましたが、先月の続きです。

毛球症のうさぎはどんな症状?
うさぎが毛球症になったときの典型的な症状は、急激な食欲低下または食欲廃絶、元気消失です。数時間前には元気でもりもり食べていたのに急にうずくまって動かなくなり、食べ物を持っていたとしてもまったく食べないということが多いようです。こんな状態のときうさぎは暗い目つきになり飼い主さんが近づこうとすると「寄るな、触るな!」というオーラを出しています。
毛球症は幽門部の閉鎖ですから症状は詰まった瞬間から急速に起こることがほとんどです。胃内にガスが発生し、胃液とガスで胃の拡大がどんどん進みます。うさぎはもともとかなり我慢強い動物ですから、あまり痛みを外に表すことがないのですが、毛球症の痛みはかなり強いらしくギリギリと歯ぎしりするうさぎもいます。

うさぎ
幽門部に閉鎖が起こると、自律神経の働きで胃腸の運動(蠕動運動)は止まってしまいます。比較的軽症であれば、胃の動きが停止したことで詰まっていた毛玉は緩んで、幽門部から胃の中央に動きます。こうなれば、液体やガスは小腸へと流れることができるので最初の急性期の激しい痛みは緩和されています。
症例によっては、毛玉が継続的に詰まったり、はずれたりを繰り返すこともあるようです。毛玉がはずれて急性期を乗り越えることができ、一度低下した胃腸の蠕動運動が自力で回復できれば自然に治癒します。しかし多くの症例は蠕動の運動が自力回復できず、食欲のない状態が何日も続いてしまいます。そうなるとさまざまな合併症が起こります。

うさぎ
合併症として最も多いのは胃腸うっ滞です。一度止まった胃腸の蠕動運動が回復しない場合、毛球症から胃腸うっ滞へと移行します。胃腸うっ滞は盲腸内細菌叢の異常を引き起こし、盲腸内のクロストリジウムが毒素を発生し、これが体に吸収されると腸毒素血症となります。また、長期間食事をとらないことから、飢餓性の脂肪肝に陥り、命が脅かせるケースもありますし、水分摂取ができないことから腎不全に陥るケースもあります。
毛球の詮塞の仕方が非常に厳しい状態では、胃腸の蠕動運動が止まってもなかなか毛玉がはずれず、著しい腹痛が継続します。詰まっているものがはずれないまま時間がたってしまえば、胃の拡張はさらに進み、疼痛性ショックから生命の危機に陥ることがあります。また、毛玉が触れている胃壁の部分に潰瘍ができることがあります。

うさぎ
1月〈2〉毛球症の治療について

この記事は2011年1月現在制作された内容です。記載内容は予告なく修正、変更を行なう場合が有ります。
Copyright (C) 2011 Sakai Animal Hospital All Rights Reserved.