うさぎの血尿 うさぎのカルシウム代謝は特異的です。多くの動物が小腸でのカルシウムの吸収にビタミンDの介入が必要ですが、うさぎはビタミンDに依存しません。すなわち摂取した食物中のカルシウム含有量が多ければそのまま小腸からの吸収量も増加します。またほとんどの哺乳類において、カルシウムの尿中排出率が約2%であるのに対し、うさぎでは45〜60%であるといわれています。そのため食餌によるカルシウムの過剰摂取は、尿中へのカルシウム排泄量を容易に増加させる原因となります。以上のことからうさぎの尿中に炭酸カルシウム結晶が認められることはまれではなく、存在自体が病的と判断する材料になりません。しかし、カルシウムの高濃度な排泄、すなわち高カルシウム尿症という状態が持続すると、膀胱粘膜への過度の刺激により、膀胱炎を起こしたり、感染やその他の要因が加わることによって、結石が形成されると考えられています。結石は膀胱だけではなく、腎臓、尿管、尿道に存在することもあります。
症状 高カルシウム尿症の状態では、ほとんど無症状または膀胱炎の結果起こる血尿や頻尿が主症状でしょう。重度の場合や慢性経過をとると元気食欲の消失や、体重減少、陰部周囲の尿やけ、あきらかな疼痛などが認められることもあります。尿の色調は血尿や色素尿の存在によって様々であるが、通常は高濃度のカルシウム結晶のため、白濁していたり、結晶が形成する砂上の排泄物を認めることがあります。
結石がある場合、その存在部位によって症状も異なります。一般的な膀胱結石では高カルシウム尿症に記述した症状とほぼ同様ですが、結石が尿道を閉塞することによって症状は著しく悪化します。すなわち、血尿や頻尿に加え、通常明らかな痛みをともなった排尿困難が認められ、閉塞の度合いによって、膀胱の膨満、腹痛、尿失禁などやときには暴行破裂による腹腔内尿貯留を認めることもあります。
しかしうさぎの尿道は伸縮性が高いため特に雌のうさぎでは非常におおきな結石が尿道に認められても、完全閉塞まで至らない場合も少なくありません。また、うさぎの疼痛や苦痛は外見上わかりにくく、食欲不振や歯ぎしりという兆候により確認されることが多いです。
2012年4月 診断について