坂井獣医科 Sakai Animal Hospital
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  2018年6月 内分泌・代謝性の病気について  
 

 さて、今回は「内分泌・代謝性の病気」についてです。その中でもワンちゃんネコちゃんによく認められる病気を2回に渡ってお話させていただきます!

 
     
  ホルモンとは
 ワンちゃんネコちゃんにはヒトと同じように、下垂体をはじめ、甲状腺、上皮小体、副腎、すい臓など多数の内分泌腺があり、これらの内分泌腺から分泌されるものを「ホルモン」と言います。
ホルモンは体内の状態を一定に保とうとする働きがあり、例えばワンちゃんネコちゃんの平均体温は38℃台ですが、外気に左右されることなく体温を保つことができるのは、ホルモンのおかげというわけです。(神経系も関係しているのですが今回省略します)
 内分泌疾患のうち、ワンちゃんによく認められるのが「副腎皮質機能亢進症」「副腎皮質機能低下症」「甲状腺機能低下症」、ネコちゃんによく認められるのが「甲状腺機能亢進症」です。
 
     
 

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

 

 8〜12歳のワンちゃんに発症することが多いです。好発犬種はプードル、ダックスフンド、ボクサー、ボストンテリア、ポメラニアン。※ネコちゃんでは非常にまれな病気です。
<原因>
 クッシング症候群はコルチゾールと呼ばれる副腎皮質ホルモンの慢性的な過剰分泌によって引き起こされます。
※コルチゾールはステロイドホルモンの一種で、身体へのストレスや炎症を抑える働きを持っています。
<症状>
・多飲、多尿・多食・腹部膨満・皮膚症状(脱毛、皮膚感染症、皮膚石灰化)・運動不耐性(筋力低下、易疲労感、パンティング)
<治療>
 ホルモン検査で測定した数値と体重に合わせた内服薬を処方します。大切なのは毎日欠かさずお薬を飲ませなくてはいけないということ。定期的に血液検査をして、ホルモンの数値が平均値になるようにお薬の量を調節していきます。

   
副腎皮質機能低下症(アジソン病)
 

 とくに若いワンちゃんの女の子に発症することが多いです(7〜8割)。好発犬種はグレートデン、ロットワイラー、スタンダード・プードル、ウェスティ。※ネコちゃんでは非常にまれな病気です。
<原因>
 上記のクッシング症候群と逆の病気で、副腎皮質ホルモンが不足することで発症します。
<症状>
・元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢・下血・多飲、多尿・虚脱・徐脈・低体温・低血圧
<治療>
 クッシングと同様です。

   
甲状腺機能低下症
 

 4〜10歳のワンちゃんに発症することが多いです。好発犬種はアフガンハウンド、アイリッシュセッター、Gレトリーバー、ラブラドール、ブルドッグ、Aコッカー、エアデールテリア、シェルティ、ボクサー、チャウチャウ、プードル、ダックスフンド。※ネコちゃんでは非常にまれな病気です。
<原因>
 大きく3つに分けられます。

(1) 本症のほとんど(99%以上)は、甲状腺のリンパ球性炎症または特発性濾胞(ろほう)萎縮に起因する「原発性甲状腺機能低下症」です。甲状腺から分泌されるサイロキシン(T4)不足により発症します。
(2) 本来、外部から体内に入ってきた異物を排除する自己免疫が、異常により甲状腺を攻撃。結果、甲状腺が破壊されて機能が低下してしまうことで発症します。
(3) クッシング症候群など他の病気と併発して発症することもあります。

<症状>
・皮膚症状…脱毛、膿皮症、脂漏症、難治性の外耳炎、ニキビダニ症
・神経症状…跛行(びっこ)、運動失調、捻転斜頸(首を傾げたままになる)、顔面神経麻痺、てんかん発作・肥満・元気消沈・徐脈・低体温・発情周期停止・むくみの影響から、悲しそうな顔に見える
<治療>
 クッシング、アジソンと同様です。

   
   
甲状腺機能亢進症
   とくに中高齢(6〜20歳)のネコちゃんにみられます。※ワンちゃんはネコちゃんに比べると発症はきわめてまれです。
<原因>
 甲状腺の過形成や腫瘍によって、甲状腺ホルモンの分泌量が過剰となることで発症します。
<症状>
・多食・パンティング(荒い呼吸)・多飲、多尿・落ち着きがなくなる・性格が活発、攻撃的になる・体重減少・食欲不振・嘔吐・元気消沈※甲状腺ホルモンは元来身体の新陳代謝をコントロールする働きがあります。それが分泌過剰になることで全身の酸素要求量が増大したり、必要カロリー量が増大します。そのため、「すごく食べるのにどんどん痩せていく」という症状がみられます。
<治療>
 上記の病気同様、内服による治療の他に、療法食による治療があります。お薬を飲まなくていい反面、内服治療と同様に、専用の療法食以外を与えることはできません。
   
 
 

 いかがでしたか?ホルモンの病気は齢を重ねてから発症することが多いため、大体の症状が「歳をとったせい」と思われてしまうことが多いです。実は、院内スタッフ(かなりのおじいちゃんネコ)が甲状腺機能亢進症を患っていますが、毎日のお薬と定期的な検査でのんびり元気に生活しています。あれ?と思われることがありましたら「老齢」で済ませてしまう前に、早めの受診を心がけてあげてくださいね。
 次回も引き続き、「内分泌・代謝の病気」についてお話しします。

 
     
  参考:講談社 イラストでみる猫の病気、イラストでみる犬の病気
Interzoo Medicine 80.81
 
  この記事は2018年6月に制作された内容です。  
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