/ 1月〈2〉 アトピー性皮膚炎の主な治療方法
アトピー性皮膚炎は完全に治すことが難しい病気です。治療の方法はいくつかありますが、組あわせながら犬猫の苦痛を軽減するために考えていきます。

●ステロイド(副腎皮質ホルモン)
かゆみを抑える効果が高く即効性があります。価格の負担も少なくアトピー性皮膚炎のかゆみ止めとして使用されています。しかし副作用が強く、長期間(数ヶ月から数年)にわたって使い続けると体内でのホルモンバランスが崩れ人工的に病気をつくってしまったり(クッシング症候群、糖尿病など)免疫抑制作用のために感染症を起こしやすくなります。また、投薬をやめると再発するという面もあります。そのため数日間のみの短期投与が望まれます。

●抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤
炎症や痒みを起こすさまざまな化学伝達物質(ヒスタミンなど)を放出しずらくしたり、移動途中で遮断したりすることによって、症状を抑えます。副作用が少ないので比較的安心して使用できますが、効き目が弱いためほかの治療方法と併用して使用することが多いです。

****
●免疫抑制剤(シクロスポリン)
過剰な免疫を抑えることにより、症状を緩和する薬です。ステロイドは全身に作用するのに対し、シクロスポリンは免疫機構を司るTリンパ球とよばれる細胞のみに作用するため、ステロイドに比べ副作用が少ないのが特徴です。

●犬インターフェロンガンマ(インタードッグ)
最近開発された犬用の注射剤です。インターフェロンはもともと犬の体にある物質で体内の免疫システムを調整する働きが強いといわれています。アトピー性皮膚炎の犬にこのインターフェロンを注射することによって、免疫システムが整い、症状の改善がみられます。

●減感作方法
アレルゲンを避けるのではなく、定期的に注射し体内にとりこむことによって、体を慣れさせ体質を改善させる治療方法です。この治療は副作用が少なく、唯一の根本的治療であると考えれれています。しかし、開始前に、血液検査(抗原特異的IGE検査もしくは皮内試験)で原因であるアレルゲンを調べておく必要があります。アレルゲンを体内に注射するため治療開始直後は一時的に症状が悪化することがありますが、徐々に症状が軽減すれば注射頻度も減らしていくことができます。

****
●シャンプー、スプレー
アトピー性皮膚炎の皮膚は、バリアー機能が整っておらず表面が乾燥しやすくなります。そのため、保湿成分の高いシャンプーや止痒効果のあるシャンプーで体を定期的に洗うことは、体表についたアレルゲンを流すだけでなく、アレルゲンの進入を予防することにもつながります。

●サプリメント
皮膚の強化をはかる必須脂肪酸(ガンマリノレン酸)もアトピーに有効です。たいていの皮膚病用の療法食にはオメガ6とオメガ3を適当な割合にした必須脂肪酸、ビタミン各種、亜鉛などが配合されており、サプリメントとしても販売されています。

****
アレルギーは若い年齢で発症し、完治しづらい病気ですので、痒がっている動物をみるのは飼い主さんにとってもつらいことです。治療によって痒みや発赤が減ることは大事ですが、過剰なケアにより逆に皮膚炎があっかしたり、薬が効きづらくなってしまうこともあります。たとえ、赤みやかゆみが少し残っていたとしても前よりも症状が軽減されればいいと考えるほうが大事であるということもあります。

少し難しいところもありますが、飼い主さん一人一人の考え方も違うと思います。飼い主さんの考えや、そのこに合ったよりよい方法をえらんでいただければいいと思います。

1月〈1〉 アレルギーについて(第3回)

この記事は2010年1月現在制作された内容です。記載内容は予告なく修正、変更を行なう場合が有ります。
Copyright (C) 2010 Sakai Animal Hospital All Rights Reserved.