坂井獣医科 Sakai Animal Hospital
   〒923-0867石川県小松市幸町3-21 TEL:0761-21-2471 アクセス:JR小松駅より徒歩10分
HOME
医院概要
治療案内
診察室日記
診察室日記
  2019年2月 下部尿路疾患・結石症について  
 

 今月は寒くなると特に発症が増える、下部尿路疾患・結石症についてお話しします。以前も尿路疾患についてお話ししましたが、今回はもう少し話を掘り下げてみようと思います。


 
     
  下部尿路疾患とは
 ワンちゃんネコちゃんの尿は腎臓から尿管を通って膀胱にたまり、尿道を通じて外に出されます。この尿路のうち、尿道や膀胱に関する疾患を総称して下部尿路疾患と呼びます。
 ワンちゃんやネコちゃんにおいて多いのは、膀胱や尿道に砂や石のような物質(結石)がたまってしまう「尿路結石症(尿石症)」という病気です。結石に刺激されることによって膀胱が傷ついて痛みが出たり、おしっこがしにくくなったりします。特に尿道に詰まり、おしっこが全く出なくなると、非常に危険で命にもかかわります。
 また、ネコちゃんに多いのは特発性膀胱炎と言われています。再発を繰り返すことが多く、とても注意が必要です。
 
     
 

尿路結石・膀胱炎の症状
・頻繁におしっこに行く
・トイレにいつもより長くいるのに、少しずつしかおしっこができない
・トイレ以外のところでもおしっこしてしまう
・おしっこが濁っている
・おしっこに血が混じっている
○以下の症状が見られたときは、すぐに病院へ!!
・おしっこする時に痛そうに鳴く
・おしっこが全く出ない
・お腹の下のほうに硬いものが触れる

 
     
  下部尿路疾患が起こる要因
 以下の内容で思い当たる点はありませんか?
・太ってしまってあまり動かなくなった
・冬場は涼しいせいか水を飲む量が少ない
・消化の悪いご飯を食べている
・おしっこを我慢する時間が長い
・日中留守が多く、トイレを定期的にキレイにしてあげられない
・ミネラルウォーターを日常的に飲ませている
・おやつはもっぱら煮干しや小魚だ
 
     
  ネコちゃんの特発性膀胱炎とは? 
 特発性膀胱炎は結石や尿路感染症がみられない、『原因がよくわからない膀胱炎』です。再発を繰り返すことも多く、猫の下部尿路疾患の約60%を占めるといわれています。
 発症の要因はストレスと考えられています。たとえば、新しい家族が増えたとき、一人お留守番をするとき、気候の変化、猫砂が変わったなど。本当にささいな事でもストレスを感じて膀胱炎になる事があります。(ネコちゃんの下部尿路疾患の割合…突発性膀胱炎57%、尿路結石症22%、尿道栓子10%、尿路感染症8%、不明3%)
 
 
 

ネコちゃんの下部尿路疾患の割合

 
     
  ネコちゃんに膀胱炎が多い理由
 もともと祖先が砂漠で生きていたネコちゃんは、水を飲む量が少なくても生きることができるように濃いおしっこをつくります。結石をつくる材料=ミネラル。ミネラルはおしっこが濃くなると増えるため、結石をつくりやすくなります。そのため、ネコちゃんはもともと結石をつくりやすい動物といえるのです。
 
     
  尿路結石の種類
 結石にはその成分によっていろいろな種類があります。中でも代表的な結石は「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石」と「シュウ酸カルシウム結石」というもので、ワンちゃんネコちゃん双方において約80%以上をこの2種類の結石が占めているのです。
 
     
  尿路結石が出来てしまったら
 食事で溶かすことができない結石の場合や、結石が大きくなってしまった場合は手術によって取り除くことがあります。細菌感染がみられる場合は、抗生物質などで菌の増殖を抑えます。
 また、食事から得られるマグネシウムなどのミネラルをできるだけ少なくするために、下部尿路疾患専用の処方食に切り替えなくてはいけません。もちろん、おやつも専用のもの以外はあげられません。
 
     
  特発性膀胱炎・膀胱炎を防ぐためには
 
 
1.

ストレスを取り除く

 

 特に特発性膀胱炎を発症したネコちゃんは、何かしらのストレスからトイレに通う回数が少なくなりがちです。心当たりのある問題から解決してみましょう。


2. 食事とおやつに気を付ける
  結石の素となる煮干し等のおやつは厳禁 膀胱炎や結石症は食事療法がとても大切です。下部尿路疾患を対象としたごはんは目的やステージごとに成分が異なり、たくさんの種類があります。経過を見て処方食の種類を変えることもありますので、獣医師と相談の上でお選びください。おしっこを濃くしないよう、ウェットフードを選ぶことも良い選択と言えます。
 結石の素となるカルシウムやマグネシウムを多く含む、ジャコ、煮干し、のりなどのおやつは厳禁です。
   
3. 水分を取らせる
   新鮮な水を常に取れるようにしてあげてください。飲みやすい容器をみつけたり、水飲み場を増やしたり、静かな場所に置いてみたり…工夫してみましょう。
  お気に入りの容器をみつけよう
   
4. おしっこを我慢させない
   トイレは静かに落ち着いてしたいですよね。特にネコちゃんはその傾向が強いです。静かであまり人目のない場所にトイレを変えてみたり、ずっと使用していた場所があるのであればそこ以外にもトイレを置いてみたり、お気に入りの砂・シーツを探してみたり…工夫する点は山のようにあるはずです。
 お散歩に行くワンちゃんは出来るだけお散歩の回数を増やして、おしっこを我慢させないようにしましょう。
 シーツや猫砂をこまめに替えてあげることも重要です。
   
5. 遊びも大切
   遊ぶことは運動につながります。毎日、数分だけでも遊ぶ時間を作りましょう。身体を動かすことはストレス発散にもなります。
   
6. 太らせない!
   肥満になれば自然と体を動かすのがおっくうになるもの。運動をしなければ喉も乾かないので水を飲む機会が減ります。結果的に結石を作りやすくしてしまうのです。
 健康のためにも、体重管理は重要です。
   
7. 定期的な診察を
   もう楽そうだから薬はやめていいだろう、ご飯を前の物に変えてしまってもいいだろう、と飼い主さんご自身の判断で投薬や食事療法をやめてしまうと、再発することがあります。獣医師の指示のもと、必ず定期的に通院しましょう。
 
     
   いかがでしたか?ほかの病気に対しても言えることなのですが、治療を途中でやめてしまうと再発をするだけでなく、お薬に対して耐性を持ってしまい、同じお薬が使えなくなってしまう事もあります。
一番良いことは病気にならない事ですが、どうしても病気になりやすい体質の子はいるものです。根気強く、完全に良くなるまで治療を続けましょう。
 
     
  参考:ロイヤルカナン 原因・結石別フローチャート  
  この記事は2019年2月に制作された内容です。  
  2019年1月記事/診察室日記に戻る/  

 


 



 

記載内容は予告なく修正、変更を行なう場合が有ります。
Copyright (C) 2019 Sakai Animal Hospital All Rights Reserved.